スリランカ滞在記、番外編、フルーツ体験記最終回となりました。
最後を飾るフルーツはコイツです。
と、その前に㊤写真中央部のフルーツ、前回、私はガイドさんにその名称を聞いたものの完全に忘れてしまい、何かピーマンみたいだと、いい加減にやっつけておりましたが、とある方から「あれはスターフルーツである」旨のご指摘を頂戴致しました。
わりとメジャーな果物なんですね。
きっと、「ピーマンじゃねえよ、スターフルーツだよ」と多くの方々が呟かれたことと思います。
輪切りにすると、星のような形状になるからだそうです。ネットで調べてみると星というよりはヒトデっぽいですが・・・
大変失礼いたしました。
さて、改めて、最終回を飾るフルーツはコイツです!
写真の下部で異様なオーラを放つ、全くフルーツっぽくない物体。どちらかと言うと、お野菜。ジャガイモ系です。しかし、その周辺に並ぶ物品のカテゴリーは完全にフルーツ。ということはこの馬鈴薯もどきも、また果物なんでしょうか?ガイドさんに聞いてみましょう。
「ああ、アレネ、ウッダッポだヨ」
は?
「ウッダッポ」
うっだっぽ、ですか?
「そう、ウッダッポ」
どうやら、馬鈴薯もどきの名称は「ウッダッポ」のようです。しかしながら、「ウッダッポ」と言われても、そのような現地語と思われる名称は初耳であり、無論それが果物であるのか野菜であるのか、推測さえつかないのであります。
ウッダッポって、果物なんですか?
「はあ?」といった感じで、ガイドさんが露骨に怪訝な表情をしました。私、何か変なことを聞いてしまったんでしょうか・・・
ガイドさんが、眼を丸くして私の目を覗きこみます。まるで「世の中にはこんな馬鹿がいるんだ」と云わんばかりです。
しかしながら、そんな蔑視の表情はすぐに立ち消え、ごく小さなため息を挟んだ後、かわりに弱者を憐れむような色が浮かんできました。
ガイドさんは「ウッダッポ」を、一つ手に取り、店主へスリランカ語で何事かを指示しました。
店主が「ウッダッポ」を二つビニール袋に入れて、ガイドさんへ渡しました。
「あとで、ミンナデ食べるとイイヨ」
そう言いい放つと、ガイドさんは営業スマイルを取戻し、市場の案内を再開したのでした。
翌日・・・
レストランで昼食を摂り、みな一息ついたところで、デザート替わり、例の「ウッダッポ」が出てきました。
外見の通り、皮も固そうです。剥いて食べるというより、果肉を抉り出すような感じです。
何というか・・・果物というものはフレッシュな果汁が飛び散るものであって、或いはバナナのようなもっさりした非果汁系であっても、どことなく南国の楽天的な雰囲気を纏っているものですが、コイツ、「ウッダッポ」は、外観も中身も、そんな果物的な美徳を一切感じさせません。反骨精神の塊、カッコよく言えばロック。フルーツのアンチテーゼ。
いやいやしかし、フルーツは見た目だけでは決まりません。やはりお味です。これだけフルーツであることを拒否したルックスでありながら、フルーツのカテゴリーにいられるということは、つまり、それを補って余りある実力があるからに相違ないのです。
近寄っただけでも思わず叫んでしまうくらい臭いのに「フルーツの王様」と崇められるドリアン。その理由は、腐臭を帳消しにしてなお余りある美味しさにあるのです(因みに私は食べたこともないし、今後食べることもないでしょうが)。
さあ、実食です!
と、その果肉を口元に近づけた瞬間、私の中で異臭騒ぎが勃発しました。迂闊です。これはつまりドリアン系フルーツ。きっとほっぺが落ちるくらい美味しいに違いありません。しかしながら、それは口に入れることの出来た者のみに許された味わい。
残念ながら、「ウッダッポ」の果肉を指したフォークと私の口元との間に生じた凡そ20㎝ばかりの距離が、それ以上縮まることは恐らく永遠にないでしょう。
「でも、木のリンゴとはよく言ったもんじゃの」
隣に座っていたツアーメンバーがふと口にしました。
そう言えば、「ウッダッポ」、大きさはリンゴくらい、皮は木の皮のようです。
ウッダッポ・・・何かの配線と配線がバチバチと繋がりました・・・
ウッドアップル!木のリンゴ!
その瞬間、私はあの時、あの憐憫に満ちたガイドさんの表情の意味を悟ったのでした。
【フルーツ体験記 完】
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