前住職より

淨寶寺は「浄土真宗本願寺派」という宗派のお寺です。本山は京都市の本願寺(西本願寺)で、親鸞聖人(1173~1263)を開祖とします。ここでは当寺の前住職、諏訪了我より、浄土真宗のみ教え(教義)をご紹介いたします。

  「浄土真宗」と言えば、今では宗派の名として考えられていますが、本来、親鸞聖人がおっしゃった意味はそうではなく、苦悩の迷いから解放されることのない私どもを、その迷いの根を断ち切って、仏の悟りにかなわしめようと願われた阿弥陀仏の本願のはたらきのことを言われたのです。

 親鸞聖人ご自身は、自分で新しい一宗を開いて自ら開祖になるというような意識はまったくなく、浄土宗を開かれた恩師法然聖人から聞かれた他力念仏の教えをよろこび、それを他の人にも伝えてゆかれたのです。

 親鸞聖人がご往生になったあと、聖人を敬慕する人たちが「法然聖人の他力念仏の教えを正しく受け継がれたのは親鸞聖人だ」という思いから、浄土宗に別して「浄土真宗」として宗派を開き、親鸞聖人を宗祖として仰がれたのです。

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 「浄土真宗」とは、阿弥陀仏の浄土から顕(あらわ)れた真実の法(人びとを救おうというはたらき)によって浄土に往きて生まれて仏となり、更に迷界(この世)に還って来て、迷える人びとを浄土に導くはたらきをするという、阿弥陀仏のはたらきによる生命(いのち)の円環的活動をいうのです。

 浄土(阿弥陀仏の悟りの世界)の徳の全体を摂(おさ)めて私に届けられた南無阿弥陀仏の真実のいわれを聞いて安心しお念仏することによって、私が浄土に往きて生まれる因(ねうち)を恵まれ、一生を浄土へ向かう道中として生き抜き、この世のいのちが終われば、浄土に往きて生まれて仏となること(往相回向/おうそうえこう)、そして浄土に往きて生まれれば、仏の智慧と慈悲のこころをもってこの迷いの世界に還って来て、生きとし生けるものを浄土に導くはたらきをすること(還相回向/げんそうえこう)、この往相回向と還相回向の二つともに、浄土を根源とした阿弥陀仏のはたらき(他力)であります。