長野市にて(番外4)

「長野市にて」のブログも、これで6回目を数えます。

我ながらちょっとしつこいかなあ?と思ってましたが、今回で終わりにします。

さて前回の続き・・・賑やかな参道から本堂へと向かった私の目的は「お戒壇めぐり」。

善光寺さんのご本尊は、紀元552年(!)仏教伝来と共に百済より伝わった阿弥陀如来像だそうです。しかしながら、絶対秘仏ということで、大きな緞子に覆われてそのお姿を拝見することはできないようになってます(長野の友人は「実は中は空っぽ」と冗談で言ってました)。

そして「お戒壇めぐり」とは、本堂の床下に降りて行き、その絶対秘仏がご安置されている大きな壇の周りをぐるりと回ってくることを言います。その際、壁のどこかに一か所「極楽の錠前」と言われる金具があって、それに触れると絶対秘仏の阿弥陀様とご縁が結ばれる、ということらしいです。

迷い苦しむ我らを救おうと、仏の側からいつでもどこでも常にはたらいて下さっている、それが浄土真宗の伝える阿弥陀様。ですから、真宗の立場としては、わざわざ「お戒壇めぐり」をする必要はないのですが、「本堂の床下をくぐる」という何やら謎めいた行為に、大いに興味をそそられました。

さて、拝観料500円を納め、「お戒壇めぐり」へと向かう列に並んで待つこと20分、本堂の隅にある狭い階段を一列になってゆっくりと降りて行きました。向かう先は真っ暗闇。最初は背後から光が差し込むため、僅かながら人影が判別できます。しかし、先へと進むにつれ、次第に闇に飲み込まれ、やがて何も見えなくなってしまいました。

完全な暗闇。いくら目を凝らしても何も見えません。辺りから「暗い!」「怖い!」などの声が聞こえてきます。私の前後にはたくさんの人が一列に連なって一緒に歩いているはずなのに、何故か孤独感が半端ナイ。右手に触れる木板の壁がなかったなら、ここがどれだけの広さなのか、自分がどこにいるのか、それどころかどこへ向かっているのかさえ不明です。「今、地震がきたらどうしよう」などとネガティブなことばかりが頭に浮かんできました。暗闇がこれほど恐怖心を煽るとは・・・

たいした距離ではないはずですが、体感としては結構な長さに感じられます。ゆっくりゆっくり恐る恐る歩を進めます。やがて前方からガッチャンガッチャンと金具のようなものを動かす音が聞こえてきました。

「極楽の錠前」です。前方の人々がそれを探り当て、触っているのでしょう。音のするほうへ目的が定まったからか、少し気持ちに余裕が出てきました。やがて私の番。手探りでありました錠前!ガッチャンガッチャン触ってやりました!思わぬ達成感が。

さらにしばらく進むと、前を歩く人の輪郭が淡く浮かんできました。徐々に光が強くなり視力が戻ってきます。やがて間もなく私は階段を昇り、無事「お戒壇めぐり」を終えたのでした。

何やら冥界をくぐって来たような気持ちです。光のなんとありがたいことか。ただ床下の何十メートルかを歩いて戻ってくる、それだけと言えばそれだけのことなのですが、大いに心揺さぶられる深い体験でありました。

しかし、真っ暗闇って本当に何も見えません(当たり前ですが)。仏教では、煩悩に覆われて真実を見る眼を持たない者のことを「無明」と言います。悟りの智慧の明るさが全くないというんですね。この「無明」という言葉、今まであまり深く考えずに受け取っていたのですが、本当の真っ暗闇を体験して、非常に厳しい言葉だったんだなと改めて感じました。

仏の智慧の眼からみれば、煩悩を抱えたものというのは真っ暗闇の中迷いに迷っている、とても危険な状態と映るのでしょう。だからこそ、無明という非常に厳しい言葉で私に迷いの深さを気付かせようとして下さっているような気がします。

そして、阿弥陀仏は別名「無量光仏」と呼ばれます。無限の智慧の光で、私の「無明」の暗闇を破ろうとはたらいて下さっているんですね。

と、色んなことを考えさせられた「お戒壇めぐり」体験でした。(了)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な善光寺の伽藍。ちなみに本堂内は撮影厳禁ですので写真はありません。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 少しご無沙汰しておりました。

    善光寺の「お戒壇めぐり」は、京都の清水寺随求堂の「胎内めぐり」によく似ているような気がします。私は行ってはおりませんが、甥っ子が真っ暗でとても怖かったとしきりに申しておりました。

    副住職も恐怖心を覚えられたんですね。人間らしくて少しほっとしました。

    ご無沙汰しておりました理由は、私も少し普通の人らしく休暇をとり母と叔母と三人で有馬温泉「有馬離宮」で骨休めをして本日帰ってきました。

    午前零時に山の上の露天風呂から見た景色は、真っ暗な中にも幻想的な雰囲気があり世間の雑踏から遮断されとても安らぎました。
    そして温泉の効能で、お肌もつるつるピカピカでより一層「べっぴんさん」になったような気がします(笑)

    今後もブログ楽しみにしていますね!!

    • いつもコメントありがとうございます。

      京都の清水さんの「胎内めぐり」、十数年京都に住んでいながら知りませんでした(・・;)
      少し調べてみると、本当に善光寺さんの「お戒壇めぐり」とよく似てますね。「秘仏」という点も同じ!
      両者とも、もともとの起源は同じなんでしょうか。
      深い闇の中では、理性よりも原始的な感情が勝ってくるような感覚があります。
      原始人は洞窟の奥で何かの儀式を行ったといいますが、もしかすると起源はそこまで遡れるのかも知れません。

      「有馬離宮」すごいところですね!みなさん、ゆっくりと寛がれて心地よい時間を堪能されたことと思います。
      温泉いいですね~、特にこの季節(^^)

      また、よろしくお願いいたします。

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