下山

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「自らの足で下山するまでが登山」

何やら小学校の先生の注意「家に帰るまでが遠足です!」を彷彿とさせますが、その意味するところは中々にシリアス。

これは、登山家野口健さんの言葉(週刊朝日2013.7.12号)。

登山においては、目の前の険しい崖を登っていくよりも、降りるほうが難しい。ロープのテクニック、はるか崖の下方を見ながら落下の恐怖に耐えつつ降りる精神力。それらが充分に備わっていないとパニックに陥り、発狂するケースもあるのだとか。

実際、野口さんが25歳でエベレスト初登頂を果たした時、他の隊の英国人登山家と山頂で一緒になったそうです。彼は23歳でやはり初登頂。ところが下山が始まった途端、パニックに陥り、最期には自分でザイルを外して、谷の底へ・・・

確かに、山の頂とは登山家の夢であり達成すべき目標でしょう。人は明確な目的に向かっては、たとえ困難が待ち受けていようと一心不乱、がむしゃらに突き進むことが出来るものではなかろうかと思います。

しかし、登ったら必ず降りなければなりません。登山と同様のモチベーションを下山時にも発揮できなければ、山頂で味わった無上の喜びを故郷で待つ人と分かち合うことは難しいのです。

「登山は人生に似ている」

「人生は登山に似ている」

わりとよく耳にする言葉ですが、登山は必然、下山を内包しています。人生において、生が死を内包しているように。

華々しい「登山」は広く語られますが、「下山」についてはあまり耳にしません。

「いかに生きるべきか」は多く語られますが、「いかに死ぬべきか」を聞くことは殆どありません。

登山も人生も「下山」を見据えなければ、中途半端なものになる・・・

生死の狭間で格闘する登山家の言葉が重く響く今宵でした。

【画像はフリー素材です】

 

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