スリランカ滞在記(28)

「アーユル・ヴェーダ」

何とも異国情緒漂う妖しい響き。

二千年以上の長きに亘って淘汰されることなく、南国スリランカで継承され続けてきた伝統的医療。無論、遠く離れた日本の針・お灸・整体などとは全く異なる思想進化を遂げてきたであろうことは明明白白。今、私たち有志はガイドさんに連れられて、1万円(お高い!取り分はいくらなんでしょう)との言値のままに施術料を前払いし、どんなカルチャーショックが我々を待ち受けているのでしょうか、その未知なる館へと足を踏み入れたのでした。

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「アーユル・ヴェーダ」

その妖しい響きから、ジャングルに囲まれた石造りの堅牢で薄暗い建物へと通され、杖を持ちマントを纏った老婆が蝋燭を持って現れて、入ってきた扉がガチャンと閉まるのが妥当のように思われますが、予想に反し至って清潔且つ開放的な南国風エントランス。

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爪の先が長く尖った老婆どころか、爽やかなスリランカ青年が案内してくれました。

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さて、これが施術台。なんつーことないですが・・・ただ何かが吊るされてます。

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何かの葉っぱに、壺・・・実に妖しい。

どうやらコイツが、我々を驚かせてくれるようです。

アーユル・ヴェーダ志願者の一行は男と女、別々の部屋へと移動させられ、私は二人のおいちゃんと共に治療を受けることとなりました。

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早速、一人のおいちゃんが施術のためか、パンツ一丁という若干屈辱的な恰好にさせられます(笑)

無論、私も追ってパン一に。

おやおや?何か枕元に用意されました・・・

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黒い・・・どうやらこいつを先程の壺へと投入するようです。

アーユル・ヴェーダ、愈々開始です。私たちは施術台に仰向けに寝かされました。そして・・・

例の黒い液体が壺の穴を介して、たらりたらりとおでこへ直撃するではありませんか。

生暖かくぬるぬるとした感触。数々のハーブを調合して作られた特別なオイルなのでしょう。それがおでこ中央、眉間の上辺りに、ゆるりと滑らかに当たって行きます。

その箇所は、仏像でいう白毫(びゃくごう)。

知らぬ方は、仏様のおでこにある「おでき」と言えば話しが早いでしょう。

しかし、あれは「おでき」ではありません。「白毫」です。

白毫とは、あれは実は「毛」のようなものらしいです。伸ばすと何メートルも伸びてしまうという珍妙なもので、普段はコンパクトに丸まっているが故に、あのような「おでき」みたいな形状で表されているというわけです。

いざ、という時、白毫はぴょーんと伸びて、もの凄い光を放つと言われています。

全く、何でそんなことに仏様がなってしまったのか分かりませんが、とりあえず白毫の解説はここで終わります。

ともかくも、その白毫の辺りに、生暖かいハーブ(かな?)オイルが柔らかく垂れ続けるわけです。そうすると不思議なことに、額を中心に温もりが頭の表面だけでなく、眼球を癒し、鼻腔の奥を温め、更に脳の内部にまで伝わってくるような感覚になり、その温もりはやがて首から下、全身へと拡がっていったのです。大袈裟に言えば。

そして、温められた全身は水蒸気のように軽く宙を浮いたようになり、意識は広大な宇宙へと向かいます。いつの間にか無数の星の光に包まれて、漆黒の海を遊泳するかの如く宇宙空間を漂っている。これがつまり世に言う「天の川」というやつか・・・という感じになったら、アーユル・ヴェーダっぽくて素敵だなあと思いましたが、流石に現代ッコの私の感性ではムリでした。

さて、その後は、全身オイルマッサージ・・・だったと思います。「だったと思う」という曖昧な表現は、先程の「オイルたらし」によって忘我していたわけではなく、そのあまりにアーユル・ヴェーダっぽくないマッサージのフツーさのため印象に残らなかった、ということであります。

「こんなもんか・・・いや、こんなもんさ」

と、心の中で漏らした私。

しかしながら、アーユル・ヴェーダ、こんなもんではなかったのです。

【続く】

 

 

 

 

 

 

 

 

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